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ホーム > 任意後見について > Vol.5 素朴な疑問に答えます。

素朴な疑問に答えます。

 連載をここまで進めてきて、4,5人の方に同じ質問を頂きました。それはきっと他の方にとっても疑問のままであると思われますので、ここでお答えしておきたいと思います。

 まず一つは、遺言書をしっかり作成しておけば任意後見なんて必要ないんじゃないの?というご質問です。いえいえ、遺言は亡くなった後のことを書いておくものですが、任意後見は判断能力が衰えてしまってから亡くなるまで、任せる人と任せる内容を決めておくものです。必要としている場面が異なるのです。

 Tさんの例を時系列にするとこうなります。
 <現在>Kと契約をしている予約だけの状態
 <任意代理契約>Tさんが発効を希望してから、判断能力が衰えるまでの期間
 <任意後見契約>判断能力が衰えてから亡くなるまでの期間
 <死後事務契約>亡くなった直後の様々な事務
 <遺言書>亡くなった後の財産処分

 但し前回も書いたように、順序通りになるとは限らず、任意代理契約が発効しないまま任意後見契約が始まるかもしれませんし、現状のまま亡くなるかもしれません。どうなっても対応できるように契約書は作成しています。

 もう一つは、子供がいる場合は任意後見は必要ないよね?という、ご質問というよりご感想です。

 まず確認したいのは、子供だからと言って当然に親の代理人にはなれないということです。確かに介護保険契約の現場などでは、意思表示できない本人の代わりに家族が契約しているケースがまま見られるようですが、厳密に言えば、これらは「取り消しうる意思表示」となり不安定な法律関係を作ってしまいます。これは契約の相手方にとっては大変不利益な状況で、もっと大きな契約、例えば不動産の売買などでは家族が代わって意思表示するというのは受け入れられません。相手からすれば、いつ取り消されるかわからない契約なんて堪ったもんじゃありませんよね。

 子供がいるし信頼もできる、任せて安心と思っていても、上記のように代理人が必要になる場合はあるのです。そして、必要に迫られてからでは法定後見を選択するほかありませんから、代理人は家庭裁判所が決めるし、その内容も法律と家庭裁判所が決めることになります。本人がしっかりしていた時の意思・希望などが反映されることはなかなか難しくなります。

 というわけで信頼できる子供が身近にいても、任意後見契約を結んでおくことは無意味ではないのです。その子供を任意後見人とする契約にしておけばよいのです。兄弟間で親の処遇を巡って争うのをしょっちゅう見聞きします。いわゆる「老人の奪い合い」ですね。そんな悲しい兄弟げんかも避けられるかもしれません。
 

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